ファミリースナップ
Family Snap3才の娘が教えてくれた愛 中編
谷家庭 中編18トリソミー症候群を持って生まれた愛娘:英里愛ちゃんが3才で聖和を迎えた谷家庭のお話の続編です。英里愛ちゃんはその短い地上生活で大切なものを多くの人に教えてくれました。
夫と一つになりなさい
妻:神様から「ゆだねなさい。その子はどんな子でも私の子だよ」という言葉をいただいて。そこから、「この子と一緒に戦って、頑張って、何としてもこの地上に産みたい」って、心から思うようになりました。
しかし、伸枝さんの強い思いを知らない周囲の人々の間には、色々な言葉が飛び交ったのだそうです。
妻:入院中の病院で、同じお部屋のお母さんがたから「どうして赤ちゃんがそんなに小さいの?」とか、「何か問題があるの?」とか。実母も心配してくれてのことなのですが「本当に何才まで生きられるの?」とか。そういった言葉もとても辛かったですし・・・。「どうしたらいいんだろう?」と、毎晩独りで泣いていました。
悲しみにくれる伸枝さんに、また声が聞こえてきました。
妻:真のお母様の声が「夫と一つになりなさい」って。「夫を神様のように思ってはべりなさい」っておっしゃられまして、「ああ、私が今まで主人をそういう風に見て、接してこなかった」という事を反省いたしました。
主人はすごく前向きな人なので、この人と一つになっていけば大丈夫だという思いになりました。また、お母様がメッセージをくださるということは、この夫婦が一体化して、精誠を立てていけばきっと大丈夫なんだと。そこから、ようやく確信に変わっていきました。
ついに出産。しかし・・・
様々な思いを経験しながら、谷さん夫妻は遂に出産の時を迎えます。
妻:取り出してから、何かこう、少し時間があって泣かないから、「大丈夫なのかしら」と思ったんですけど、吸引とか色々されていく中で、娘が小さな声で産声をあげて。看護師さんが、横に連れてきてくれて、娘と初めて会った時に、すごくホッとしたんですね。
看護師さんが、「ママと握手よー」ってしてくれた時に娘がニコ〜って笑ってくれたんです。それを看護師さんが見て凄くびっくりされて、「こんな生まれたての赤ちゃんが笑うなんて、初めて見ました」っておっしゃって。その時に、「ああ、私たちも精誠を尽くしたけれども、娘が一番頑張っていたんだな」って気付いて。「ああ、よかった。これから一緒に頑張ろうね」っていう思いになりました。本当に喜びの瞬間でした。
2015年8月7日、英里愛ちゃん誕生
英里愛ちゃんは酸素吸入器をつけ、病院の万全の看護の中で成長し、2ヶ月後、退院することになったのですが・・・
妻:娘は、家に帰ってきたその日から呼吸が苦しくなりはじめて、次の朝、完全に呼吸が止まってしまったんです。でも、自宅ですから、酸素吸入器も何もなかったので、すぐ救急車を呼んで、そのまま集中治療室に。一日でまた集中治療室に戻ってしまったんです。
重度の心疾患を持った英里愛ちゃんが、病院の外で生きていくのは、簡単なことではなかったのです。
妻:その時、集中治療室でも苦渋の選択を強いられるんですけれども。
「呼吸器をつけなかったら、お嬢さんはこのまま難しいでしょう」という事を言われて。ただ、呼吸器をつけてしまうと、挿管をしてそれが外れなくなるかもしれないので、ずっと昏睡状態で寝たきりになって「そうなると、お嬢さんは病院からはまず出られなくなります」とも言われたんです。
地上に誕生できたけれども、不自由なまま病院で・・・なんて言うんでしょうね・・・ただ生かされるっていうのは、どうなんだろうかって思って。その時、病院に「呼吸器はつけません」って伝えたら、先生からは「あ、じゃあ、このままお嬢さんは、お亡くなりになってよろしいんですね」って言われて。私は「え?!」 って・・・「もう、どうしたらいいんだろう」と思ったんですけど、でも、もう、「それならそれで、仕方がないと思います」と返事をして、決意して。
もう、その時は私も無我夢中でしたし、自分の魂を娘に全投入をして、何とか生きて欲しいという祈りだけだったです。
なんとか生きて欲しい! 谷さん夫婦の必死の思いとは裏腹に、医師は「もうできることはない」と病室を離れてしまったそうです。
妻:そうしたら、娘が急に元気に・・・元気にというか呼吸がだんだん楽になってきて。ドクターも最初はモニターだけで見ていたんですけど、また娘のところに戻ってきて、「何か、すごいですね。本当に、子供の生命とは分からないものですね」っていう感じで・・・。それから、集中資料室で1ヶ月ぐらい過ごした後、一般病棟に移ることができました。
それで、2ヶ月後に退院したら、娘も少しずつ元気になってきて、主人と共に毎日、娘と過ごせる日々が始まったんです。
英里愛ちゃんは、医師も驚くような奇跡的な回復をして、ついに退院できるようになりました。伸枝さんは、自宅で完璧に娘の面倒を見られるようにと、入院中、医師や看護師さんから徹底的に医療ケアの仕方を学びました。
谷夫妻と娘さんの驚くべきお話はまだ続きます。
谷さんのお話から、病院という場所についても、もう一度考えさせられます。
谷さん夫妻新米のパパとママに、何の心の準備もないまま突然に突きつけられる過酷な状況。患者と家族にその時の状況を、それがどんなに残酷であっても端的に告げなければいけない医療関係者の立場。毎日、人の生死と向き合うその非日常的な場所で働く皆さん。病院というところは時に、本当に厳しい場所になるのだなと痛感します。