ファミリースナップ
Family Snapまず、夫婦が向き合って
山田家庭(後編)山田キミヒロさん、チョ・ウォルシンさん夫妻(仮名)。6人家族の後編です。後編では、子供の教育について興味深いお話をうかがえました。
もう、空が黄色く見えました!(妻)
編:奥様は日本に来られて、習慣の差の他に食べ物なんかはどうでしたか?
妻:そうですね。食べ物は韓国の料理とかキムチを食べたかったんですが、買い物に一人で出かけられないんですね。そのことが一番辛かった。
子供を預けられるようになって、家のことができるようになって、少し余裕が出てきました。
妻:お母さんは元保育師さんで、赤ちゃんに慣れていたし、子育てに関して教えてくれました。双子を産んでまだ1歳になっていない時に下の子を妊娠しちゃって。もう、私は空が黄色く見えたんです! どうしようって!(笑) こんなに大変なのにまた妊娠なんて!と。
でも、悩みながら主人に妊娠のことを話したら「仕事を辞めてでもあなたを大切にして子供の面倒も見るから大丈夫だよ!」と、言ってくれて。それですごく安心して、気持ちが晴れて。お義母さんに笑顔で「妊娠しました!」と報告をしたら、「あなた達、よく笑って平気でそんな話ができるね。あんなに大変な思いで双子を産んだのにもう妊娠して、これ以上にこき使うつもりなの!」って。確かにそれもそうですけど。(笑)
でも、生まれたらこれまで以上にかわいがってくれて。保育園のお迎えなんかもすごく協力してくれたんです。
夫:親だからやってくれるのは当然になっちゃうといけないと思い、親には常に感謝の言葉を送るように気遣っていました。今でも変わりません。
それは、もちろん妻にもなんですけれど、ねぎらいの態度とか、言葉の語尾とか、気持ちをどう込めるか気にしています。
休みの時は最大限、自分の時間は子供を見ることに使うし、家に帰って洗濯物があれば畳んだり。本当に小さいことですが、できることは何でもやろうとしています。
お辞儀をしながら布団に入る
編:実は旦那さんと私は、古いお付き合いなのですが、昔は良く奥さんのこと、子供のことを話して励まし合いましたね!
夫:はい、会うとよく話をしましたが、子供と奥さんの話しかしなかったですねえ。けっこう共通点が多くて。帰った時の妻の姿とか。
妻:ふふっ!(笑)
夫:妻は、すっごい、疲れはてた姿で。自分は、お辞儀をしながら布団に入って行くっていう……。
妻:(笑) でも、居るときはすごく子供を見てくれるので、子供達はみんな、パパが大好きです。子供がなかなか寝ない時も、長男はおばあちゃんがおんぶして寝るまで外を散歩して。パパは二人をおんぶして抱っこして散歩。下の子は私が見るしかないんですけど、散歩はしないで、早く寝なさいっていうだけ!(笑)
でも、子供達が小さい頃は、あまりに大変すぎて記憶がないです。どうやって過ぎて行ったのか覚えていないです。(笑)
今は、みんな大きくなって自分たちで遊んでくれるし、話もできるし、お父さんの帰りが遅くても寂しくないですね。
教育より、まず夫婦が向き合っているか!
編:子育てのこと。どんな風に育てて行こうと思っていますか?
妻:わたしは、もう、アッパに全部任せています。
夫:ああ、それは何にも考えていないってことだよぉオンマ。
妻:(笑) そんなに大きな希望はないんです。学生なので勉強はしっかりして欲しいですけど。
長男が中学校で初めての試験日の朝に、ネットの動画を見たりゲームをしたり、行く前に全然勉強しないので、朝からすごいぶつかって。(笑) あまりにも緊張感なさすぎる息子を見ているとがっかりして。科学者になりたいと大きなことを言っておきながら、そんなに勉強をしなくてできるかっていう話ですね。
長男は部活はクラリネットをやっています。小6で受験をしたんだけど、ちょっとレベルが高すぎて、落ちちゃって。それから勉強する姿をあまり見てない。(笑) もう、諦めてんのかなあ。家に帰ると、ゲーム、動画。それを見ると親は気持ちよくないですね。親として不満はあります。
夫:子供達にどうしてあげたらいいのか? 今年、農村留学を取り入れたり、いろいろやっての結論なんですが。子供に対して何かをやるという以前に、夫婦で向き合ってないといけない。それが結論ですね。
お父さん一人が子供のことをごちゃごちゃ考えて、こうしようああしようと決めても、本来は夫婦で考えるべき事の半面でしかないわけですよね。それで至った結論というのは独りよがりになってしまうし、それが成功したとしても妻は喜べない。
もちろん、子供の成長は喜べたとしても、一緒の感覚では喜べない。これは違うんじゃないか? というのが最近の結論で。
何をやるにしても、僕一人で考えてきたことが多いのですが、それでじゃ良くない。妻と一緒に考えて父母として導き出さないと物事が成功しないということが、よく解りましたね。
長男の受験で結果が出せなかったことにしても、結局は僕と長男で話し合って決めたことなんで。長男が「やる」と。じゃあ「やろう」と。そう言ったことに対して妻は介入できなかったんですね。それでは、受験の時も、受験終わった後も家族で共有しづらい。
夫:子供に対してどうこうという前に、大前提として僕が妻と向かい合っているかということが重要ですよね。明日もちょうど海の日ですけど、どう過ごすか? ということになると、独りよがりで「ここに行こう」と決めてしまっていたんですけれど。そういうことも妻と一緒に考えて。「これが絶対によい」って、思い込みが激しい自分でしたが、今は妻がどう思うかということを聞いてから進めるようにしています。
そうやって、父母が向き合うことが、子供にとって一番いい教育だということで。それが最近至った結論です。
それ以外に、子供がどういう風に育ってくかということは、それはそれで、それぞれに心配はあるんですけど、まずは夫婦だなと。
長男のゲームは、心配していない
夫:長男が勉強しないということに関して、妻みたいには心配していないです。ゲームをやっているのは、それがすごく楽しくてやっているのではなくて、本当に投入できる何かが見つからないからやっているだけであって、何かを探しているんだなと。
吹奏楽に投入してみようと思ってみたけど、やってみたらシックリ来ないなあと身悶えしている姿も見ているので。彼が何にハマるのか。
今は、子供がやりたいということ、やめたいということ、みんな本人達と話して、妻にも聞いて、その上で進めていますね。
妻:私は、深く考えるのは苦手。旦那さんは考え過ぎちゃうんです。私が考えるのが好きじゃないからかもしれないけど、それはちょっと考えすぎだよ、と言うんですけど。正反対だからこそ、相手に習うことがあるんだなと思います。
一家の大変なストーリーを、終始笑顔と涙で語ってくれたご夫妻。子育ての究極奥義にたどり着いた山田家の未来に、期待大です。