ファミリースナップ
Family Snap「3世代で料理人もいいですよね」
丸山家庭今回は、神奈川県にお住いの丸山さん夫婦です。東京で人気食堂を夫婦で切り盛りしているお二人。3人のお子さんのうち、二人の息子たちが料理人の道へ。この春、長女の家庭に待望の初孫が誕生しています。
ジャガイモの皮と世界
夫アキヒコさんは、新潟生まれ。小さい時から料理を作るのが好きでした。
高校卒業後、割烹料理店で修行し調理師の免許を取得。
ご両親はアキヒコさんを愛され、息子のお店のため、地元に土地を買って用意してくれていた程でした。
丸山さんはその腕を買われて、世界中から引き合いがあり、遠くはアラスカに呼ばれ、とある有名人の専属シェフを務めたこともあります。どこに行っても“味”で信頼を受け、食事まわりの一切合切を任されることが常でした。
無口な夫のアキヒコさんに代わって、まず奥さんに旦那さんのお仕事ぶりを伺いました。
妻:主人は、あまり口数が多い人ではないので。ひたむきにね、頑張ってきた人だなあと思い、誇りに思っています。
料理を作る動機が「どうしたらみなさんの健康に一番いいかな」ということなんですね。そして「手間暇かかっても美味しい物を作ってあげたい」ということ。まあ、費用は決まってしまっているので、その中でしないといけないんですが。
主人はけっこう、お客さんの好物なんかを一人ひとり覚えていて「◯◯さん今日は来ないな。◯◯さん今日のこれ好きなのになあ。仕事が忙しいのかな?」なんてつぶやいているのを見ると、料理に愛情を込めているんだなあと感じます。
妻マサミさんは結婚前、世のため人のためにと、高い志を抱いてバリバリ仕事をされていた方なのですが、結婚を機に夫の仕事のサポートにまわりました。
妻:ジャガイモの皮をむきながら「私の人生これでいいのかしらと」しばらく思っていたこともありましたけど、食堂でお客さんたちがね、入って来られた時の表情と帰られる時の表情が違うんですよね! いい表情になられていたりとか、すごく幸せな表情で元気になっているとか。「丸山さんの料理は細胞が元気になっていく気がする!」って言ってくださる人がいたり。
実は、食堂にはとてもえらい方もよく食べに来られていて、その方々が、日本全国に対して、あるいは世界的に責任を持たれていることを思うと、これはすごく重要な仕事じゃないかと。そう思ったんです!
息子二人も食の道へ
実は、丸山さんの3人のお子さんのうち男兄弟二人は料理関係の仕事に就いています。
フレンチの調理師になった次男さんにもお話をうかがいました。
編:お父さんの料理で一番好きなのは?
子:何を食べても美味しいかったです。強いて言うならお父さん特製のカレーかな(笑)
編:料理人を選んだのは、お父さんの影響?
子:そうですね。就職先を探すときにいろんな分野がありましたが、親のやっている料理がすぐ浮かびましたね。小さい頃から見ているから、何か染み付いているものがあったんだろうなと。自分でも思いますね、染み付いていたんだなあと。
編:料理の道を選んだ時、お父さんの反応は?
子:あ、やっぱり嬉しそうでしたよ!すごく嬉しそうでしたねえ。(笑)
編:料理のことでお父さんに相談することはありますか?
子:あ、ごくたまにお店の「まかない」のことで相談したり。親子丼とか、親に教わったものを作っています。かまぼこが入っているんですよ。(笑)
編:お父さんの、料理人としてのすごいところは?
子:あの年まで、ああやって一人でやっているのは、尊敬しています。それと、心にムラがない。心にムラがなく30年間以上も続けていることが、すごいかなと。やはり、そこを一番尊敬してますね、続けること。
編:今の時点で、何か目標はありますか?
子:そうですねえ。何か料理の部門で一点突破したいですね。親を超えていかないといけないと思っています。姉の所に孫も生まれましたしね。3世代で料理人なんていうのもいいですよね。(笑)
食堂は僕らの故郷
編:自分の店を持ちたいですか?
子:持ちたいですねえ! 自分の家じゃないですけど、子供達にも全員が帰る故郷みたいなのがあったらいいなと思いますね。自分とか兄弟はたぶん全員、あそこの食堂が故郷だと思うんですけど。そういう故郷ができたらいいなと思いますね。
そういう店を、自分でも作っていきたいですね。
編:ご自身にとって、料理というのは特別なものなんですね。
子:そうですね。そこから外れたくはないです。それが父母につながっている道っていう感覚がありますねえ。そこから離れると、何か違ってしまうというような気がしています。
孫が生まれて、襟を正されます
夫アキヒコさんにも、息子さんのことについて少しお話をうかがいました。
編:息子さんが料理の道に進むと聞いて、嬉しかったですか?
夫:いやまあ、実は正直なところ、この道はちょっと大変な道なのでやめておいたほうがいいんじゃないかと思いました。でも、勉強で身を立てるようなタイプではなかったので、これから手に職をつけるのはいいのではないかと。
厳しい道ですが、頑張ってほしいです。
編:お孫さんを迎えて、どんなお気持ちですか?
妻:孫が結婚をするところを見たいですねえ。孫を迎えて、なんかちょっと襟を正される感覚です。
孫が幸せな祝福結婚を迎えてゆくまで、親たち(子供たち)をね、後ろで支えたいなあという。そのためには私たちも襟を正してね……やぱり、孫たちがねえ、お爺ちゃんやお婆ちゃんの生活ぶりとかを見てねえ……。そう思うと責任を感じますよね。しっかりしなきゃあってね。
ひたむきに料理の道、真心の道を歩んできた夫アキヒコさん。その背中を見つめてきて、自らも料理の道を選んだ息子さん。そんな祖父と叔父を見たお孫さんも、もしかしたら将来、お料理の道に進みたいと言うかもしれませんね。
細胞を元気にしてしまう丸山食堂のDNAが広がって、より多くの人たちを元気しにしてくれると素晴らしいですね。