ファミリースナップ
Family Snap明るい軽さに救われました!
山田家庭(前編)今回は、都内にお住いの山田キミヒロさん、チョ・ウォルシンさん夫妻(仮名)。日本人の夫と韓国人の妻の国際カップル。4人のお子さんを持つ6人家族です。
そのイメージはすべて崩れました
編:ご夫婦の出会い、最初の頃の印象を教えてください。
夫:女性というと、おしとやか、控えめ、そんな事をイメージしていたのですが、そのイメージがすべて崩れました。(笑) 良い意味で言えば、リードしてくれる人!
食事の時間も彼女に合わせ、歩くスピードも彼女に合わせ、どこに行くのも、何をするのも、彼女に合わせていたのを覚えてます。合わせるのはそんなに苦じゃない性格なので、むしろそっちの方が考えなくて良いから楽。そんな印象でした。(笑)
妻:最初……私が彼をどう思うかではなくて、相手から好かれなかったらどうしようという思いと、すごく太った人や好みじゃない人だったらどうしようとか、そんな想像ばかりしていたので、最初に彼の写真を見た時は、「ああ、これくらいなら普通かな、大丈夫かな」と、安心しました。(笑)
最初に会った時も、ホテルの部屋まで迎えに来てくれて親切にエスコートしてくれたので良い印象を持ちました。わたしはお兄ちゃんと弟に挟まれて育ったので、彼にしてみたら強い性格だったかもしれないですね。(笑)
編:出会った時はお二人とも学生だったそうですが、韓国と日本でどのように交流したのですか?
夫:交流は主に直接会いに行く形で。年に2回長期休みがありますので、バイトや他の予定もそっちのけで、その時は必ず直接会うようにしていました。
妻:お互いに、行ったり来たりしていましたね。その時に私がちょっとショックを受けたのは、韓国のカップルしか見たことがないので、韓国のカップルは電話もよくするし、すごくラブラブで。私は祝福結婚の相手が決まったのに、手紙もあんまり来ないし、当時国際電話も高くて電話も出来ないし。ほんとに結婚するのかなと、辛くなった時がありました。
だから、こっちから期待しすぎるとがっかりしちゃうので、ちょっと諦めたところもありました。
夫:他のご家庭の話を聞くと、手紙を1週間に1回、3日に1回、必ず電話は、とか聞きましたが、そういう努力をあんまりしていなかったなと。でも、長期休みの時は必ずお互い会うという、決まり事みたいになっていましたかね……。
理解は、できなかったですね!
妻:1度は私すごくがっかりして、すごく彼に言ったので、彼もショックですごく長い手紙をくれて。なんか「すみません」みたいな長い手紙をくれて、読んでちょっと泣いちゃったんです。覚えてる? ……覚えてない?
夫:……(手紙を)見せられたら思い出すかもしれないけど……。
妻:もう、どこにあるかわからない!(笑)
編:(笑) でも、こうしてほしいなという気持ちは、旦那さんに率直にぶつけて、それには、旦那さんも率直に答えてあげたと……
夫妻:そうですね。
妻:でも、その頃、学生ボランティアの仕事もしていたし、忙しすぎて手紙のこととか考える時間もなかったかもしれないよね。
夫:……まあ、言い訳ですけどね。(笑)
編:では、奥様は日本に来てご主人の生活を見ながら初めて、手紙も書けないくらい忙しく頑張っていたんだな、と理解していったのですか?
妻:理解は、できなかったですね!
編:あ、え? 理解できなかった!?
妻:それはもう何度も言ったんですけど、ほんとに言い訳です。1日の中で、5分か10分ぐらいの時間がなくて手紙が書けないというのは、ほんとに言い訳じゃないですか!(笑) 寝る前にちょっと、時間をとって書けばいいじゃん!みたいな。(笑) どんなに忙しくても、自分が愛する人にそれくらいの時間がないのかって話です。
夫:ん? そうじゃなくて、日本人の忙しい生活っていうものに対して、理解ができましたか?っていう……
妻:できないよね。
夫:あ、それもできない?
妻:できない。(笑)
泣きながら外で電話をしました(夫)
編:(笑) わかりました。それでは、ここからちょっと本番なんですけど。
そういう期間もありつつ、日本を理解していかれたと思いますが、日本の長男の家に嫁ぐというのは、言葉のこともあり不安や苦労があったのでは?
妻:不安はあんまり感じたことがないですが、2004年3月に家庭を出発して、その年に長男が生まれて、2年目に娘が双子で生まれて、3年目にもう1人生まれて。3年間で4人を産んで、育児と出産であまりの忙しさに、日本語がどうのこうのと、それどころじゃあなかったんです。
今考えると、双子を妊娠した時に、3ヶ月入院していたんですけど、スマホもなかったし、同室のお母さんたちと話すしかなかったんですが、その時に日本語がうまくなったのかも。
お義母さんとのことで一番辛かったのは、4人目を妊娠している時、夫が大分に単身赴任中で、夫の実家にお義母さんと妹さんと暮らしていた時。子育てを家族に手伝ってもらうんですが、韓国では一度嫁いでしまうと、嫁も夫の父母と実の親子のようなに接するので、あまり「ありがとう」って言わないんですね。「家族だから当たり前でしょう!」みたいな感じで。
文化の違いだと思うんですけど、こちらのお義母さんは「こんなに手伝ってあげているのに、あなたはありがとう言わないの?」って。
言われた瞬間に、すっごくショックで。アッパ(韓国語でパパ)もいないし、いやぁ、ショックが大き過ぎてその時は泣いた記憶があります。(笑) すごく手伝っていただいて有難かったんですけど、それを言わなくちゃいけないんだなあって初めて知って。文化の違いですね。
編:この話は、旦那さんにすぐ伝わったのですか?
妻:すぐ、電話をしましたね。(笑)
夫:覚えているのは、ただただ申し訳ないということだけですね。実は、ありがとうと言わないのは韓国全体の文化ではないと思ってます。彼女が育ってきた地域の文化であって。
いずれにしても、自分が育ってきた文化と全く逆の文化に馴染まなきゃならないのは相当つらいし大変。しかも出産直後の大変な中で。自分がそこに居られないということの申し訳なさ。申し訳ないとどれだけ思っていても、居ないのは事実なので。ただ謝るしかなかったですね。
その時自分にできるのは、本当に申し訳ないと思っていることを伝えることだけだと思って、彼女も泣いていましたが、自分も用事をそっちのけにして、泣きながら外で電話をしましたね。
軽さ最強、革命の妻!
編:旦那さんから見て、奥様の素晴らしいところはどんなところですか? 珠玉の一点を教えてください。
夫:ああ、これは……選べないなあ、沢山ありすぎて。
編:あ、いくつでもいいですよ!
夫:うーん、まずは、我が家に本当に必要だった要素としていうと、「軽い」ことですかね。軽薄という意味じゃないですよ! ニュアンスが難しいですが、重くないというか。背景的なものとか、まあ性格も明るいというか、やや軽いですが。(笑) いい意味でね!
妻:軽いって……(笑)
夫:オンマ(韓国語でママ)、いい意味だから!(笑)
夫:うちの家族って、なんかすごい、根深いんですよ! 良い意味では心情が深いとか愛情が深いとか言えますけど、見ようによっては、恨み深いとか、妬み深いとか。悪い方向にも深いんですよね。一度喧嘩になっちゃうと「何なんだ!」という思いがずっと渦巻いているわけですよ。
でも妻は、その内容がどんなにひどかったとしても、あけっぴろげにするというか。一晩寝てすぐ忘れるじゃないですけど。それを意識してやっているのではなくて、普通にそうなっている。「気にしてもしようがないじゃない」みたいな。それは、本当にありがたいですね。我が家系の先祖が見れば、革命的なことだと思うんです。何だこの軽さは!って。(笑) 「軽やか」なんです。
そうじゃないと、悩み深くもあるんですよ我が家は。それを軽くしてくれる!
この家系によくぞ来てくれた妻であると、感謝しています。