ニュース
NEWS7月11日付け最高裁判決について
プレスリリース
昨日(2024年7月11日)、最高裁判所で下された上告審判決に関して、当法人の見解を掲載いたします。
7月11日付け最高裁判決について
昨日、献金に関する損害賠償請求事件について、最高裁判所の判決が出されました。
現在の司法の3審制において、最高裁の判断として、このような判断を下されたことに対し重く受け止めるものであります。しかし同時に、その内容については、以下の点において問題があると考えております。
この判決は、
①公証役場の認証付き念書に記載された不起訴合意を示す部分を無効とするもので、
②信者が行った献金が不法行為による「損害」であるかどうかについては、2審である高等裁判所が用いた判断基準が不当であるとして最高裁が判断基準を示した上で、審理をし直すように高等裁判所に差し戻すものです。
今回の最高裁判決は以下の点において不当であると考えます。以下、2つの主要な争点に関する当法人の見解を述べます。
第1 念書の効果
念書の効果について最高裁は、以下の通り判断しました。
(信者Aは)約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓して先祖を解怨する儀式等に参加するなど、被上告人家庭連合の心理的な影響の下にあった。そうすると、信者Aは、被上告人家庭連合からの提案の利害損失を踏まえてその当否を冷静に判断することが困難な状況にあったというべきである。
しかし、教理に従い、献金を捧げ、宗教儀式に参加することは信仰に基づく行為そのものです。これを「家庭連合の心理的な影響の下にあった」などとするのは、本人の信仰心を否定し、いわば教団の「マインド・コントロール」下にあったとするものです。「マインド・コントロール」概念は非科学的理論であるとして、欧米の学会や裁判所においてはすでに完全に否定されています。明示こそ避けてはいますが,最高裁がこうした考え方を採用するのは、著しく不当であると言えます。
また、最高裁は、念書を無効とする理由として、
本件不起訴合意の内容は、信者Aがした1億円を超える多額の献金について、何らの見返りもなく無条件に不法行為に基づく損害賠償請求等に係る訴えを一切提起しないというものであり、本件勧誘行為による損害の回復の手段を封ずる結果を招くものであって、上記献金の額に照らせば、信者Aが被る不利益の程度は大きい。
などと述べました。
しかし、念書作成当時,信者Aは,自分が献金をしたことが被害であるとの認識は全くありませんでした。ここで言う「損害」、「不利益」とは、一体何のことでしょうか。審理は高裁に差し戻され、不法行為該当性と「損害」の有無の判断は差戻審に委ねられており,未定です。ところが、最高裁は、それを待たずに「損害」があったことを所与の前提として念書を無効としています。これは「本末転倒」としか言いようがありません。
なお、最高裁(法律審)、は事実審(1審・2審)の事実認定に拘束されるにもかかわらず、今回の最高裁判決は、事実審の事実認定(念書を書いたのは信者Aであり、内容も信者Aの意思の通り)に反して、念書の作成や念書の内容は「家庭連合からの提案」であり、「不起訴合意は、終始、被上告人家庭連合の信者らの主導の下に締結された」などと判示しています。これは明らかに民事訴訟法に違反した認定であると言わざるを得ません。
第2 献金勧誘行為の違法性
第2に、本件献金勧誘行為を原審が適法と判断したことについて、最高裁は、考慮すべき事情の一部しか取り上げていないとして「審理を尽くさなかった」と判示しています。
しかし、最高裁判決が示した考慮事項には、献金する側の事情や、本件献金後何年も経った後の事情までもが含まれています。献金を受領する側が受領時に認識せず,あるいは全く知り得ない事情をもって献金受領行為の違法性を判断することは大いに問題があります。不法行為は行為者の「故意」を主観的要件としており,行為者が認識していない事実を捉えて不法行為の成否なかんずく社会的相当性の逸脱を判断することは不法行為法の枠組みを逸脱するものであると考えます。行為者が知らなかった事実を根拠にして社会的相当性を逸脱し違法とされるのでは,結果責任を問うに等しいことになります。
なお、事実審(1審・2審)は具体的な献金勧誘行為(いつ・誰が・どのように)を一切認定していないにもかかわらず、最高裁は、「各献金は被上告人家庭連合の信者らによる献金の勧誘を受けて行われたものであった」などと述べています。これも、民事訴訟法に反した認定であり、明らかに不当です。
総じて言えば、本件判決は,私的自治の原則や、原審による事実認定の尊重などの、当然遵守すべき法理を曲げてまで下した「結論先にありき」の判断であると考えざるを得ません。
2024年7月11日
世界平和統一家庭連合 本部法務局
(2024年6月10日付お知らせ)