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公開抗議文「立憲民主党に問う ―目指すは宗教弾圧か?―」

プレスリリース

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立憲民主党に問う

―目指すは宗教弾圧か?―

世界平和統一家庭連合

法務部

 

立憲民主党(以下,貴党)は,「脱会支援者からヒアリング 党旧統一教会被害対策本部会合」と題する記事を貴党のWebサイト上に掲載しました。

 

同記事によると貴党の旧統一教会被害対策本部(本部長:西村智奈美衆院議員)が本年8月18日,第7回会合を国会内で開催し,「旧統一教会からの脱会を支援してきた」という宮村峻氏から,被害の実態と課題について話を聞いたとのことであり,冒頭,同本部事務局長の石橋通宏参院議員は,宮村峻氏を皮切りに具体的な話を聞いていきたいと挨拶し,「救済の在り方」等を知った上で「被害者の救済」等に資する立法措置を準備しようと議論を進めている旨述べたとのことです。

 

また同記事は,会合には,同本部特別参与の有田芳生氏(元共産党員)が同席し,宮村氏について1985年,87年当時からこの問題に関わり,「多くの信者の脱会に多大な力を尽くしてくるとともに,今メディア等で元信者が発言をしていること」にも,同氏の力が大きく働いたと述べたと報じています。

 

宮村峻氏

宮村峻氏

しかるに宮村氏は,長年に亘り当法人信者に対する強制的脱会説得に関与してきた人物であり,以下に詳述する通り,宮村氏の脱会強要の違法性は既に最高裁判決によって確定しています(平成27年(オ)第308号、平成27年(受)第385号)。

 

従って,立憲民主党がこうした人物を「多くの信者の脱会に多大な力を尽くし」た人物として会合に呼び「救済の在り方」等について聞くこと自体,極めて異常であると言わざるを得ません。のみならず,同氏らから「救済の在り方」等について聞いた上で立法措置を準備するという以上,同会合は,違法・違憲な脱会強要手法の法制化を目指すものであり,当法人のみならず他宗教の信者に対してまで信教の自由を侵害し,宗教弾圧をもたらすのではないかとの危惧を強く抱かざるを得ません。

 

しかし,このような方針は,憲法尊重擁護義務を負う国会議員においては断じて許されないことです。

 

したがいまして,当法人は,違法・違憲な脱会強要手法の法制化を目指す動きをみせる貴党に対し,ここに厳重な抗議を申し入れる次第です。以下詳述します。

 

 

1.最高裁で確定した違法性判断

 

解放直後の後藤氏

監禁解放後間もない後藤徹氏
(入院中の病院で撮影)

1995年9月から2008年2月まで12年5ヶ月に亘る拉致監禁,脱会強要の被害を被った当法人信者後藤徹氏は,宮村氏ら加害者を提訴し,東京地裁,東京高裁,最高裁でいずれも勝訴しました。判決は,宮村氏が監禁中の後藤徹氏に対して脱会強要を行った事実を認定し,被告親族らに対して認めた損害賠償金2200万円のうち1100万円を連帯して支払うよう宮村氏に命じています。

 

以下,最高裁で確定した同事件原審東京高裁判決(平成26年(ネ)第1143号事件)の判示の要点部分を抜粋して掲載します(同事件原告の後藤氏は下記控訴審判決では「控訴人」,被告らは「被控訴人」と表現されています。また小見出しは当法人で付記したものであり,各マンション名は抽象化して表示しています)。

 

貴党には,宮村氏がいかに悪質な人権侵害に関与してきた人物であるのかを明確に認識して頂くよう求めます。

 

 

【監禁説得の違法性】

 

○ 日本国憲法20条1項は,信教の自由は,何人に対してもこれを保障すると定めているから,ある宗教の教義がどのようなものであったとしても,それが直接対外的に他の人々や他の団体等の権利や自由を侵書したり,危害等を加えたりするものでない限り,他から干渉されない自由が保障されている。

 

○ 控訴人は,昭和38年11月2日生まれの成人男性で,平成7年9月11日当時,既に31歳で,特に他者の介護や補助を受けなければ日常生活等に支障があるという状態ではなかったことは明らかであるから,親兄弟といえども,控訴人を別個独立の人格を有する個人として十分に尊重しなければならないことは当然のことであり,控訴人の信じている宗教の内容が親兄弟の考え方と異なるからといって,任意の説得の範囲を超え,有形力を行使して,その自由な意思や行動を制約し,強制的に統一教会からの脱会を迫ることは,もはや社会的に許されている親子兄弟による任意の説得の範囲を超えるものであって違法であり,客観的には監禁と評価されても致し方のないものであった。

 

○ 平成20年2月10日に荻窪のマンションから解放された時には,身長182センチと長身で約70キログラム程度あった控訴人の体重は,多くとも約50キログラム程度に低下し,全身筋力低下,廃用性筋萎縮症などと診断されるまでになっていたことが認められる。これらの事情は,被控訴人T(後藤氏の兄)らの控訴人に対する行動の自由の制約が,控訴人の体調等について十分に配慮してなされたものではなく,控訴人の健康を損なわせる結果になっていたことを示すものであって,荻窪のマンションにおける滞在についても,控訴人に対する行動の自由の違法な制約か継続し,拘束が長期化する中で,控訴人の体調等に対する管理や配慮が十分ではなく,違法性の高いものになっていたと認めるのが相当である。

 

○ 控訴人は被控訴人T(後藤氏の兄)らによって新潟に連れ去られた平成7年9月11日の時点において,既に31歳の成人男子であって,その意思能力や身体状況等において,被控訴人Tらが問題とする統一教会の信者であるという一点を除いては,特段の問題は認められなかったのであるから,これまで認定した被控訴人Tらの控訴人に対する行為は,控訴人の信仰を放棄させるためになされた有形力の行使であって,しかも,控訴人の任意の承諾に基づいてなされたものではないから,違法なものといわざるを得ない。しかも,被控訴人Tらの控訴人に対する監禁等は計画的なものであって,その後,平成20年2月10日まで,約12年5か月の長期間にわたって継続されたものであり,控訴人に重大な被害が生じたことも明らかである。

 

 

【宮村氏の脱会強要】

 

○ 被控訴人宮村は,披控訴人Tに対して荻窪のマンションを紹介するなどして,被控訴人Tらが長期間にわたって控訴人の拘束を可能とする場所の提供に関与しただけではなく,荻窪のマンションにおいて,平成10年1月頃から同年9月頃までの間,合計73回にわたり控訴人と面談し,統一教会の教義の誤りなどを指摘するなどして。控訴人に対して統一教会から脱会するように働き掛けたものである。

 

○ もちろん,被控訴人宮村自身が,荻窪のマンションにおいて,事実上,同所に監禁されている控訴人の状況を十分に認識した上で,極めて多数回にわたって控訴人と面談し,控訴人に対して統一教会から脱会するよう説得していたものであるから,被控訴人宮村においても,被控訴人Tらによる控訴人の拘束について,これを理解した上で幇助していたものと認めることかできる。

 

○ 被控訴人Tらの行為はもとより,その幇助とみなされる被控訴人松永や被控訴人宮村の行為についても,控訴人に対して統一教会の信仰を捨てることを強要していたものといわざるを得ない。

 

 

2.国際的機関からの指摘

 

 当法人信者を監禁して行う脱会強要の手法は,密室で行われるものであるため,監禁中のレイプ事件やマンション高層階から脱出を図った信者が転落して瀕死の重傷を追う事件,長期監禁中に信者が脱会説得の専門家から包丁で脅迫を受ける事件, 監禁中の信者が苦痛に耐えかねて自殺する事件,精神病院への違法強制入院事件など,様々な悲劇を生んできました。

 

他方,監禁説得する側の異常性は止まるところを知らず,男性を妻子から引き離して隔離し,脱会させる事件や,夫婦を幼い子供達から引き離して監禁する事件,複数の患者を抱える医師を拉致監禁する事件,更には20名近くで教会を襲撃して信者を拉致する事件など,狂気の沙汰とも言える異常な人権侵害が継続しました。

 

更には,脱会した信者の中にも解放後重度のPTSDを患う者が複数現れ,大手出版社の月刊誌でも取り上げられました(講談社発行『月間現代2004年11月号』掲載「書かれざる『宗教監禁』の恐怖と悲劇」と題するルポライター・米本和広氏の長編ドキュメント)。同記事によれば,拉致監禁,脱会強要の結果PTSDに苦しむ元信者らは,「信仰の自由を強制的に奪われ続けた」こと(主治医の発言)の結果,今も奈落の底でもがき続けているとのことです。

 

 こうした中,米国国務省は1999年以降, 2015年までの間,国際宗教自由報告書ないし国別人権実施報告書において当法人信者に対する強制的脱会説得問題についてほぼ毎年のごとく取り上げました。

 

 また,国連の自由権規約人権委員会は2014年6月,日本政府に対しこの問題に対する憂慮を表明し善処を勧告するに至りました。

 

 したがって立憲民主党が,宮村氏が行ってきた脱会説得の手法を元に法制化を試みているのだとしたら,国際社会からも重大な非難を浴びるであろうことは明らかです。

 

 

3.組織性・計画性,及び悪質性

 

上記「2」で述べた医師に対する拉致監禁,脱会強要事件にも,後藤事件で被告となった前記宮村氏及び新潟の松永牧師の両名が関与しています。同医師は自身の被害体験を陳述書にまとめて前記後藤事件に提出し,前記判決の認定材料となりました。同陳述書には,拉致監禁,脱会強要を行う側の内情を目撃してきた同医師の体験談が含まれているため,宮村氏らが行う拉致監禁,脱会強要の組織性・計画性,及び悪質性を知る上で極めて貴重な資料であると言えます。そこで同医師作成の陳述書の要点を以下に記します。

 

拉致監禁された当時平均35名の外来患者を担当し,入院患者も15名担当していたが,これら患者の中には瀕死の重篤患者も数人いた。ところが,実家を訪ねた際に突然20名近くに襲われ,都内のマンションの一室に拉致監禁された。同室には宮村氏が来て脱会強要を行った。患者の治療方針を録音したテープを病院に送りたかったが,宮村氏が反対したとのことで許されなかった。「人の命がどうなっても何とも思わない男なのか」と心底強い怒りと憤りを覚えた。

 

約1ヶ月後,同僚の医師らが裁判所に人身保護請求を申立てたが,宮村は監禁場所を新潟に移し,松永牧師の指導下,更に監禁が継続した。こうして1年3ヶ月間に亘って監禁され,その後もリハビリと称する監視下での生活を約半年間に亘り余儀なくされた。監禁中,解放されるためにやむなく偽装脱会をした。この結果,監禁中ないしリハビリ中に以下の行為を強いられた。

 

○ 宮村氏の指導により有田芳生氏による取材に応じさせられた。監禁されていた部屋に有田氏と記者とが訪れ取材を行い,有田氏の記事は週刊誌に掲載されたが,拉致監禁の事実は一切報じられなかった。

 

○ 宮村氏の指導により反統一教会報道を行うTBSの報道番組のインタビューに応じさせられ,テレビカメラの前で意に反して統一教会批判を行わされた。宮村氏は元信者に対して統一教会に対する敵愾心,憎悪,怒りを持つよう厳しく指導していたが,撮影当日もその場を取り仕切っていたため,真意に反して統一教会に対する敵愾心,憎悪,怒りをあらわに表現させられた。

 

○ リハビリ期間中,監禁された信者に対する強制的脱会説得に加担させられた。また,信者を拉致監禁するため準備中の父兄に対する勉強会やセミナーに元信者として参加させられ講義など担当させられたが,セミナーでは拉致監禁の指導や模擬訓練までもが行われた。

 

○ 宮村氏から全国霊感商法被害対策弁護士連絡会(全国弁連)の山口広弁護士及び紀藤正樹弁護士を紹介され,統一教会に対し請求する理由などないことを認識しつつ意に反して両弁護士に委任させられた。この結果,両弁護士を通して統一教会等に対する金銭的請求等が行われた。

 

○ 元信者が統一教会に対して献金返還等の損害賠償を求める「青春を返せ訴訟」が全国で起こされていたが,新潟の「青春を返せ裁判」の打ち合わせに5~6回参加させられた。知る限りの原告は全て拉致監禁によって脱会させられた人達だった。会議では弁護士は熱心であったが,原告らは50名くらいのうち5名くらいしか参加しておらず,参加者も熱心ではなかった。これは,訴訟への参加が脱会の判断基準(踏み絵)としての機能を果たす中,元信者らは宮村氏や松永牧師から言われてやむなく訴訟に参加しているからではないかと感じた。

 

松永牧師

信者の拘束方法指導ビデオ
(講師は被告松永牧師)

貴党の会合で有田氏は,「多くの信者の脱会に多大な力を尽くしてくるとともに,今メディア等で元信者が発言をしていること」にも,同氏の力が大きく働いたと述べたとのことですが,自身や提携する牧師が脱会させた元信者をメディアに登場させ,自身の意のままにメディアの前で発信させているわけですから,同氏の力が大きく働いたのはその通りです。

しかし,拉致監禁,脱会強要という違法な人権侵害を手段としてメディアが操られてきたことは重大問題です。そしてまた,統一教会を被告として提起する裁判についてまで,宮村氏ら人権侵害を繰り返して来た者達のコントロールが及んできたというのは,極めて忌むべき事態です。

 

貴党は,こうした違法な人権侵害によるメディアのコントロールや司法のコントロールに積極的に参入したいとの意向で宮村氏を招いたのでしょうか。だとすれば,貴党こそ,解散すべきであると思料します。

 

 

4.全国弁連の宮村氏に対する評価

 

 全国弁連の東京の弁護士らも脱会した元信者を原告とする「青春を返せ訴訟」を担当しましたが,宮村氏が脱会させた元信者の代理人となった弁護士の中には,元信者から脱会時の経緯を聞く中で宮村氏の手法に疑問を持つ者も現れ,宮村氏の脱会説得の手法は「脱会活動に名を借りた金儲けであり,実態は拉致監禁であり,棄教強要に過ぎない」と主張して宮村氏を全国弁連から排斥すべきだと他の弁護士らに要求しました。同弁護士によると,この結果,少なくとも同弁護士が全国弁連に所属していた間は,宮村氏を排斥することができたとのことでした。

 

一方,後藤事件で宮村氏の代理人を務めた全国弁連の山口広弁護士は,平成27年6月15日に民事裁判の証人として出廷した際(東京地裁平成24年(ワ)第19029号),この件について聞かれると,前記弁護士から,「棄教の強要」「脱会活動に名を借りた金儲け」との露骨な発言があったか記憶にないと証言し,また宮村氏の活動をそういう活動とは認識していないと証言しつつも,全国弁連が牧師資格のない宮村氏を紹介するのはやめた方がよいとの議論があり,協議した結果,日本基督教団の相談窓口を紹介することに決めたと証言しました。

 

山口弁護士は宮村氏の代理人であった関係で,宮村氏に不利な発言は避けざるを得なかったものと考えられますが,いずれにしても,家庭連合に反対する全国弁連の内部においてすら,脱会説得の専門家として紹介すべきで無いとされた宮村氏を貴党がことさらに「多くの信者の脱会に多大な力を尽くして」来た人物として会合に招き,「救済の在り方」等を聞いた上で「被害者の救済」等に資する立法措置を準備しようと議論を進めているというのは,余りにも異常なことだと言わざるを得ません。

 

 ところで,全国弁連が紹介先としたという日本基督教団においてすら,脱会説得の結果「心に傷を受けていく人」がいる事実や失敗事例を教団内で説く牧師が現れ,それまで「保護,救出」と称して一部牧師らが行っていた「隔離説得」をやめた経緯があります。

 

こうした過去の経緯も踏まえずに,貴党がいきなり宮村氏のような,脱会強要の違法性が裁判で認定された人物を「脱会支援者」として招いてヒヤリングを行うなど,もはや狂気の沙汰としか言いようがありません。

 

再度申し上げます。貴党の現在の動きは,まかり間違えば,違法・違憲な脱会強要手法の法制化を目指す危険なものであり,当法人の信者のみならずあらゆる宗教の信者の信教の自由の侵害,宗教弾圧を助長するものであって,到底許されざる行為です。こうしたことを自覚し,政党として良識ある行動を取るよう強く要望するものです。

 

以上