コラム

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やりたいことを明確にし、なりたい自分になるヒント

幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座
阿部美樹

 あなたの、やりたいこと、なりたい姿、実現したいことは何ですか? 自分のことなので、これをはっきりさせるのは簡単なように感じます。しかし、案外これが難しいのです。幸せになれない多くの人は、やりたいことを明確にできずに不幸になっています。

 人生で悩みが多い人と、幸せが多い人の違いは何でしょうか? それは日頃意識している視点の違いです。悩みが多い人は、意識が悩みに集中しています。一方、幸せが多い人は幸せを意識しています。悩みに意識がいくと、不幸と課題と過去に意識が集中し、一日の多くの時間をそこに費やします。不幸だから悩むのではなく、視点が不幸に向いているのです。
 大切なことは、悩み解決ではなく、未来を見つめることです。前向きな人は、意識が未来に向いている特徴があります。だから、「何をしたいか」を見つけて、それを実現し、幸せになることにエネルギーを集中することが大切です。意外にも不幸な人は何をしたいのか明確になっていません。足元しか見えないので、すべてを現状から判断してしまうのです。
 
 では、なぜ、やりたいことを明確にするのが難しいのでしょうか。たいていの人は、自分がやりたいことを勘違いしています。つまり、やりたくないにもかかわらず、やりたいと思い込んでいるのです。世間体や人の目を気にしてやろうとしたり、家族からの期待、友人、知人の常識に邪魔されたりしていると、本当にやりたいことが見えなくなってきます。やりたいと思っていないのに、「やらねばならない」という意識が影響し、やりたいことの中に、やりたくないことが含まれてしまっている場合があるのです。
 では、どうしたらよいのかというと、まずは「やりたくないこと」を明確化します。やりたくないことを書き出すのです。成功の法則を紹介する本ではよく、「やりたいことを明確化しなさい」というアプローチをとります。ところが、それを見つけきれていない人が多いのです。
 そこで、振り子の揺れの両極を意識するように、まずやりたくないことを書き出すことで、本当にやりたいことが分かってきます。やりたくないことを明確にすると、あなたが潜在的に思っている願望が引き出されてくるのです。
 
 例えば、夢や目標で、社長になりたい、収入を増やしたいと考えたとします。社長になると、人に接する機会が多くなり、仕事時間も増える可能性があります。しかし、本音では「楽をしたい」という気持ちだったとしたら、精神的ストレスが増えるかもしれません。また、社長だと出張が多くなったり、交際の幅が広がります。しかし、本当は家族との時間が好きだし、子供と遊びたいという気持ちだとしたら、家庭内のトラブルにもつながるでしょう。
 このように、楽をしたいのに忙しい人生を目指したり、家族と一緒にいたいのに、出張の多い人生を目指していたりする場合があります。こういった時に、「やりたくないこと」「なりたくないこと」を明確にしておけば、的をついた人生の目標を描くことができるでしょう。
 
 さて、やりたいことが明確になったら、それをどのように実現するかが重要です。経営コンサルタントとして4000社以上の企業を育成してきた神田昌典氏は、目標を実現する人の習慣について次のように説明しています。それは、「目標を紙に書く」ことです。あまりにも単純なことですが、自分の夢・願望・目標を紙に書くか書かないか、それが運命の分かれ道だといいます。
 誰もが幸せになりたいと願っていますが、それが「どのような状態?」と言われると、曖昧な場合が多いのです。なんとなく「良くなりたい」ではだめです。明確な言葉になっているかが重要であり、漠然としていては実現しません。明確化の表現が「書く」ことです。
 人間は、自分自身に質問をすると高精度なアンテナを張って、必要な情報を収集し始めます。過去の経験や目の前で起こっている状況すべてから答えを探索し始めます。しかし、目的意識を持って質問しないと、せっかくの能力も機能しません。例えば、洗濯機が壊れてしまったとき、それを意識しながら新聞を見ていると「最新の洗濯機が限定5台で安くなっている」というチラシを発見するのです。このように「洗濯機がほしい」という要求を出さないと、情報が目の前にあっても見えません。
 
 実現したいことを目標として紙に書き、潜在意識にインプットしておけば、その実現に必要な情報はいつか必ず与えられます。脳はいくつもの作業を同時並行に処理しているので、100の質問をすれば、100の検索エンジンが同時に動き出している可能性があります。
 このように「紙に書かれた目標を眺める」習慣を持つことが大切です。目標を意識すると、達成するためにはどうしたらよいか、という質問を心の中でするようになります。別に答えを探そうと努力しなくても、「目標を実現するために、いま何をすればよいかな」と質問するだけでよいのです。すると、目標の実現をサポートするようなできごとが起こってくるはずです。
 
●参考文献 神田昌典著『非常識な成功法則』フォレスト出版,2002年

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