コラム

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心をすっきりさせる「掃除の効果」

幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座
阿部美樹

 皆さんの家庭や職場で、「あれ、どこにいったかな? ここにおいたはずなんだけど……」と言いながら捜し物をすることはありませんか? 一般的なサラリーマンは、仕事の中で1日当たり数分から数十分を捜し物に使うといいます。1年間にすると、何と150時間も時間をロスしていることになります。おおよそ1か月間、会社で働く時間と同じです。ちりも積もれば山となると言いますが、これほどまでに無駄な時間を過ごしているのです。

 倒産する会社には、一つの共通点があると言われます。それは、会社内が「汚い」ことだそうです。また、不祥事を起こす会社にも共通の特徴があるそうです。それは、事務所内が「乱雑」だということです。
 ごみや汚れ、乱雑さ、からはマイナスエネルギーが発生するといいます。同じエネルギーは互いに引き寄せ合い、増幅し合うものです。乱雑な仕事環境のマイナスエネルギーが現象として表れることがらには、「集中して仕事に取り組むことができない」というものがあります。これは、エネルギーが分散させられているからです。逆にいうと「ごみ、汚れ、乱雑さ」を取り除けば、状況を改善できるといえます。
 
 家族のコミュニケーションでも、身の回りの環境を改善すると、心が変化したり、関係性が改善されたりします。皆さんは、部屋をきれいに掃除した時、心まですっきりしたという経験はないでしょうか? 身の回りの不要なものを捨てただけでサッパリし、爽快感を感じた経験は誰もがあることでしょう。身の回りの環境と、私たちの心は影響しう部分があります。
 
 掃除を徹底して発展した有名な会社があります。自動車部品販売会社の株式会社イエローハットです。創業者の鍵山秀三郎氏は、会社を設立してから50年以上、掃除を続けてきました。社長を務めていた頃は、毎朝6時30分頃に出社し、約1時間半、会社内外の掃除をしていたそうです。同社のトイレ掃除が起点となって、「掃除に学ぶ会」というものができ、全国に広がっていった経緯があります(NPO法人日本を美しくする会|掃除に学ぶ会 http://www.souji.jp/)。
 鍵山氏が長年、掃除に取り組み続けたことで、もっとも顕著な変化を自覚できたのは「社風が良くなったこと」だと言います。掃除は共同作業で行います。自分たちの職場を、共同作業できれいに掃除することによって、自然と連帯感や協調性が育まれます。その結果、社内の人間関係が良くなり、社風が良くなるのでしょう。
 また、お店をきれいにすると「客層が変わる」という現象があったそうです。営業でも、掃除が行き届くようになると、接客マナーも格段に向上し、きれいなお店には良いお客様が来店してくれるようになったそうです。
 
 さらに、車をきれいにすると事故が激減するといいます。キズがあったり、汚れたりしている車に乗ると、気持ちも粗暴になり、運転も雑になるという人間の心理があります。その状態が結果として事故につながるのです。だとすれば、車をいつもきれいにしておけば、気持ちも運転も穏やかになるのではないでしょうか。イエローハットでは、先輩社員が後輩社員の車を洗うのが日常茶飯事だといいます。お互いがお互いの車を洗い合うようになって、社内の協調性や連帯意識が高まり、風通しのよい人間関係が生まれるようになったそうです。
 鍵山氏は、人生の公式を次のように表現しています。
  
 非凡=平凡×徹底である。さらには、超非凡=平凡×徹底×継続である。
  
 掃除というと当たり前のことかもしれません。しかし、身近な当たり前のことを継続し、徹底することで人間関係をはじめ、人生のすべてが好転するきっかけになるのではないか、と思います。ぜひ、自分の部屋や家、職場でも実践してみてください。

 
●参考文献 鍵山秀三郎著『仕事の作法』PHP研究所,2009年

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