コラム

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自分自身を育む「自己コーチング」

幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座
阿部美樹
幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座

 前回に引き続きコーチングの話題をもう一ついたします。
 コーチングにもとづいたコミュニケーションは、愛の関係性を育むポイントです。しかし、人を導く前に、まず自分自身を育む生活をしていかなければなりません。「自己コーチング」する生活です。自己コーチングのキーワードを「自己責任」「自己質問」「自家発電」という観点で説明します。

 人生とは不思議なもので、不幸な人には不幸なできごとが絶え間なく訪れ、幸せな人には幸せなできごとが絶え間なく訪れる傾向があるものです。では、不幸な人と幸せな人は何が違うのでしょうか? 様々な要因があると思いますが、その一つは「口癖」の違いです。不幸な人の口癖は、「○○のせいで……」「○○が悪いから」というものがあります。人や周りの「責任」を追求する心の姿勢が表れた言葉です。

 
 一方、幸せな人の口癖は、「○○のおかげで……」「私が責任を持ってやります」というものです。人や周囲に感謝する心の姿勢や、自分が責任を持って取り組もうとする心の姿勢が表れた言葉です。何が大きく違うのかというと、他人の責任と受け止めるか、自分の責任と受け止めるかです。
 自己責任として人生を見つめ、何事にも取り組むならば、人生は成功と幸せな方向に導かれ、自分も成長していきます。なぜかと言うと自己責任を持つと、創造性・知恵・意欲・行動力などを高めることができるからです。

 
 エステティシャンとして2004年、日本最優秀賞を受賞し、世界110か国の中でも最優秀グランプリを受賞した今野華都子さんという方がいます。今野さんがエステを始めたのは45歳のときだったそうです。平凡な主婦からエステ世界一になった人です。
 さらに、今野さんは2007年、志摩半島にある豪華なホテルのオーナーに請われて、そのホテルの社長に就任します。そのホテルは、著名な経営者がバブルの最中に計画、380億円を投じて1992年に完成したホテルです。しかし、バブル崩壊後、経営不振が続き、赤字は年々かさむ一方となっていました。
 社長となった今野さんを迎えたのは、社員150人の冷たい、あるいは反抗的な視線だったと言います。それまで何人もの社長が来ては辞めていく繰り返しだったからです。今野さんがまず始めたのは、社員一人ひとりの名前を呼び、挨拶することでした。また、全員と面接し、数か月間かけて要望や不満を聞きました。そして、今野さんが全社員を一堂に集め、このように話したそうです。
「みんながここで働いているのは、私のためでも会社のためでもない。だいじな人生の時間をこのホテルで生きる、と自分で決めたからだよね。また、このために会社が悪くなったとみんなが思っている不満や要望は、私や経営陣が解決することではなく、実は自分たちが解決しなければならない問題です」
 そして、今野さんは次の二つの課題を全員に考えさせました。
「自分は人間としてどう生きたいのか?」
「自分がどう働けば素晴らしい会社になるのか?」
 ホテルが変わり始めたのはそれからです。自分の担当以外はやらないという態度だった社員が、状況に応じて他部門の仕事を積極的に手伝うようになっていったそうです。就任2年半でホテルは経常利益が出るようになりました。全社員の意識が瀕死のホテルをよみがえらせたのです。
 そのポイントは、「自分が責任を持つ」姿勢であり、「主人意識・オーナーシップを持つ」という姿勢だと思います。「自己責任力」は個人も、家庭も、企業をも活性化させていくキーワードになるものです。

 
 どのような姿勢で取り組むかによって、その成果が違うことは想像できるでしょう。1:1.6:1.6の2乗の法則というものをご存じでしょうか?
 やりたくないことを嫌々ながらやったときの効果を1とします。次に、同じことでも「やるべきだ」「世のため、人のため、自分のためになることだ」とやりたくないことでも、納得して取り組んだときの効果は1.6になるといいます。さらに「それは楽しい」「ぜひやりたい」「世のため人のためにもなる」とやりたいことを喜んで行うときの効果は、1.6の2乗(約2.6倍)になるといいます。自己責任を持って意欲的に取り組むならば、モチベーションを高く保つことができ、効果、成果が高まるようです。

 
 では、自己責任を持つためにはどのようにしたらよいのでしょうか? それは「自己質問」することです。前述のホテルが変化したきっかけは、二つの質問を各自が自分に問いかけたところにありました。
「自分は人間としてどう生きたいのか?」
「自分がどう働けば素晴らしい会社になるのか?」
という質問です。
 人は誰もが問いかけられたら答えたくなるものです。同じように自分自身に対しても問いかけると無意識に答えを探すようになります。自分で探した答えは、誰のせいでもなく自分が決めた答えとなります。

 
 今まで人や環境、組織や体制のせいにしてきた人も、自分の答えには責任を取ろうとします。このように「自己質問」を繰り返すならば、創造性や知恵を引き出し、可能性を見いだす人になるでしょう。
 自己質問を繰り返し、自分で答えを探していくことを「自己コーチング」といいます。自身を導く能力を高めましょう。日常生活でも、すぐに人に聞いたり、自分で決めつけたりするのではなく、あらためて自分に「質問」してみたら、新しい発見があるかもしれません。

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