コラム
colum人間関係の基本は「挨拶」から
コミュニケーションの出発、基本となるものはなんでしょうか? 家庭や学校、職場、地域など、どこでも人間関係は「挨拶」から始まります。ビジネスでも、日常生活でも、人と人との出会いで最初に交わされるのが挨拶です。縁や出会いといった視点から考えると、挨拶が自分の人生や会社の行く先を大きく変える力を持っているということです。
世界的に有名な超一流ホテル「ザ・リッツ・カールトン」では、ホテルの哲学や信条を明文化した「クレド」というものがあります。そこには、お客様に最上のサービスを提供するために必要な内容が書かれていますが、従業員の行動指針として「サービスの三ステップ」というものがあります。
①あたたかい、心からのごあいさつを。
②お客様をお名前でお呼びします。一人一人のお客様のニーズを先読みし、おこたえします。
③感じのよいお見送りを。さようならのごあいさつは心をこめて。お客様のお名前をそえます。
(ザ・リッツ・カールトンHP 企業理念「ゴールドスタンダード」より http://www.ritzcarlton.com/jp/about/gold-standards)
このような三つのサービスを一言にしてみると、「挨拶の贈り物」「挨拶のおもてなし」とも言えるのではないでしょうか。
挨拶の本質は、自分の心を伝える行為にほかなりません。そのため、究極的に問われるのは挨拶をする人の心です。しかし、心は、伝わるような形にして示さなければ相手に伝わりません。だから、挨拶をするためには形を学ぶことも必要です。心を込めるという姿勢と心を形に表すという両面が重要になります。
では、どうしたら「心を込めた挨拶」ができるでしょうか? それは、言葉の意味を意識すると、感情・心情がこもった挨拶となるのではないでしょうか。意味を噛みしめて挨拶をしてみるということです。
まずは、「ありがとう」です。「ありがとう」は、もともとは「有り難し」という言葉に由来しています。「有り難し」とは、めったにないほどのことを相手からしていただいた状態と言えます。それに対して感謝することが、「ありがとうございます」という言葉です。儀礼的に言うのではなく、めったに起こりえない、有り難いことが起こったんだと思ってみると、心がこもってくるのではないでしょうか。
「お世話になります」という挨拶は、自分のために人から何かをしていただく、いただいているときに感謝の気持ちを表すために使います。だからこそ、自分は一人では生きているのではなく、皆様の力を借りて、そのおかげで生きている、本当に感謝します、という気持ちを込めて言ってみてください。この言葉は、まさに生かされていることへの感謝の気持ちを表したものと言えます。
また、「こんにちは」「こんばんは」は、「今日は、良い日ですね」「今晩は、良い日ですね」という意味であり、「いただきます」は食事をつくってくれた人への感謝や自然の恵みに対する感謝の気持ちが込められています。
このように挨拶の意味を意識しながら、次に努力したらよいポイントを三つ紹介します。第一は、自分から先に挨拶するということです。挨拶をする場面では、相手よりも先に自分から声をかけましょう。一般的には、先に挨拶をした人のほうが、より積極的で、より「おもてなしの心」が高い人であると判断されます。
二番目は、相手の「名前」を呼んで挨拶することです。前述のリッツ・カールトンが接客で大切にしているのが、この「名前を呼んでのおもてなし」です。予約の段階で、名前が分かっているため、「○○様、ようこそお越しくださいました」と挨拶することができます。初めてのお客さんの場合、名前が分からないこともありますが、二回目以降であれば、顔を覚えておけば名前を呼ぶことができます。多くのお客さんは、名前を覚えてくれたんだと驚きます。名前を一言加えることで、心がこもった挨拶になります。
三つ目のポイントは「ほめ言葉」と共に挨拶することです。挨拶と一緒に、相手の良いところを見つけてほめてみましょう。これはお世辞を言うことではありません。相手の良いところを見ようとする態度が必要です。ほめることと、お世辞は本質が異なります。ほめるとは、相手と相手の長所に対する敬意から出てくる行為です。
挨拶は最も簡単にできるコミュニケーションです。上記の点を意識しながら、挨拶でより良い人間関係の一歩を踏み出していきましょう。