コラム

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心に届く言葉

コラム
阿部美樹

「子供は親の言ったとおりに育つのではなく、親が行なったとおりに育つ」。

親が子供に言い聞かせる場合、親の言っていることとやっていることが一致していれば、子供は自然と聞くようになるものです。しかし、親が実体を伴わない言葉をいくら繰り返しても、子供は一向に聞くようにはなりません。

「やってみて、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」。山本五十六の言葉にもあるとおり、人の心に届く言葉には「言行一致」の態度が何よりも重要なのです。

同じ言葉を伝えるにしても、説得力がある人とそうでない人がいます。ある人の言葉は、非常に実感のこもった印象深い話として聞こえます。「心に届く言葉」です。一方、うわべだけの、心に届かない言葉もあります。それは何が違うのでしょうか?

これは表現の良し悪しだけの違いではなく、その言葉に「行動」「実体」が伴っているかという部分があります。口先だけでは、相手の心まで届かないということです。時に「態度」は言葉以上に影響力があります。

連合艦隊司令長官だった山本五十六氏の言葉に、態度の大切さを考えさせられるものがあります。「やってみて、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」。この言葉は、人を教育する、人を動かすためのポイントがまとめられています。

まず、「やってみて」という行動、態度が最初にあります。そして、「言って聞かせて」という言葉で伝え、さらに「やらせてみて」というように相手に実践させて見守ることです。最後に「ほめてやらねば人は動かじ」とほめることの大切さを加えています。「態度」「言葉」「見守る」「ほめる」という順番です。しかし、現状はどうでしょうか? とかく「やりもせず、言うだけ言って、叱るだけ!」となりがちかもしれません。行動が伴わず、その言葉も批判・忠告・評価だけになる可能性があります。

大切なのは、「やってみせる」という態度です。口より体が先に動くことが大切です。口より体のほうが時には説得力があります。口で言っていることと、やっていることが一致すること、「言行一致」が重要です。

親子関係でも、親が子供を叱る場合、親のしていることと言っていることが一致している場合は、子供は素直に聞きやすいでしょう。しかし、矛盾している場合は、子供も葛藤します。

また、子供に対する親の影響として、次のようなことが言われます。「子供は親の言ったとおりに育つのではなく、親のやったとおりに育つ」。

例えば、次のような話があります。ある家庭で、父親が毎日、息子に「おはよう!」とあいさつしているのですが、その息子はあいさつを返しませんでした。それを気にした母親は、「お父さんがあいさつしているでしょう?」と言うのですが、それでも変わりません。夫婦で話をした時、「あなたがあいさつしているのに、うちの息子はどうしてあいさつをしないのかね……」と母親が言うと、父親は「私はあいさつをしたくてしているので、息子からあいさつしてほしくてしているのではないから、そんなことでとがめなくていいよ」と言ったそうです。その後、息子は学校を卒業してある会社に就職します。一緒に入社した新入社員の中で、ひときわ社長の目に留まったのが、この息子でした。なぜかというと、誰も大きな声であいさつをするからということでした。いつでも、どこでもあいさつをする印象の良い社員だったので、期待して責任を与えたそうです。

家ではあいさつをしなくても、親がいつもしていたので、自然に受け継がれたのでしょう。もし、お父さんが息子に向かって「あいさつをしなさい!」という人だったら、将来、その息子が父親になった時、同じように子供に「あいさつをしなさい!」と叫ぶ人になるでしょう。このように、してもらったことは自然にしてあげられますが、してもらっていないことは努力しなければできません。

人間関係の基本である「親子関係」を見ると、態度による影響が本当に大きいことが分かります。子供が親のようになりたいと願っている場合も、願っていない場合も、等しく親に似てくると言います。良くても悪くても親から子に相続されるのです。

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