コラム

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相手の心に届くメッセージ

幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座
阿部美樹

人は誰もが自分の存在や行動が他人にどのように影響を与えているか気になっています。本心では他人が喜んでくれること、感謝してくれることを望んでいます。だからこそ、Iメッセージを通して、それが確認できたときは自分の存在価値を再認識することができ、非常にうれしく、心に届きやすくなります。相手が誰であっても、心に届く表現をしていければ「信頼関係」は築いていけるのです。

 人間関係では、相手の思いを受け止めるとともに、こちらの思いを相手によく伝えることが大切です。しかし、伝えるとき、表現方法によっては相手が理解しがたい場合もあります。理解しがたいというのは、頭で内容が分からないだけでなく、「気持ちが受け入れられない」という反発の思いなどもあります。
 だからこそ、相手が受け入れやすくするための表現力を磨くことが重要です。表現次第では、相手に対する私的や依頼、さらには反対意見であったとしても、相手の心に心地よく届く場合があります。今回は、相手の心に届く表現方法について紹介します。
 ゲーテの言葉は「手は手でなければ洗えない」というものがあります。汚れた手を洗い流そうとしても、手を使わなければ洗えないのは当然です。同じように、相手の心を動かすためには、自分の心を動かす必要があります。相手の心を開くためには、まず、自分の心を開かなければなりません。一般的には、相手が心を開いたり、心変わりしてくれるよう待つことが多いものです。自分の心を開示すると傷つくのではないかという不安が出てくるので、無意識に抑制しているのです。
 だから、こちらから心を開いて、言いにくい本音や悩み、苦しみなどの感情表現をすると、相手が安心して本音を吐露することがあります。人間は、相手が心を開けば、恐怖や不安・緊張感がとれて自分も心を開きたくなるものです。これは「自己開示の相互性」と言われています。自己開示の度合いが高くなればなるほど、相手の自己開示の度合いも高くなるという法則です。
 次に、相手の心に届く表現を紹介します。それは「Youメッセージ」から「Iメッセージ」の表現に変えるというものです。文字通り、Youメッセージは主語が「あなた」になるメッセージであり、Iメッセージとは、主語が「私」となるメッセージです。
 日頃、私たちが使う表現はどちらが多いでしょうか。話す内容が自分に関することであれば、「私」が主語になり、相手に関する内容であれば「あなた」が主語になることが普通かと思います。しかし、相手に関することでも「私」を主語にしてみましょう、というのが「Iメッセージ」のポイントです。
 例えば、「あなたはもっとこうしなさい!」という命令言葉は「Youメッセージ」です。相手に行動させようとするので、時には反発心や抵抗を感じさせる可能性が高くなります。それを「Iメッセージ」に変えてみると、相手の反応が違ってくるはずです。
 次のような夫婦の会話があったとします。
 妻が大きな音で音楽を聴いている場面で、夫が「おまえは、うるさいんだよ。いいかげんにしろよ!」とYouメッセージで言いました。指示命令型の大変きつい言葉になっています。妻は反発して言い返すかもしれません。
 しかし、それをIメッセージで表現すれば次のように変わります。
「大きな音で頭が痛いよ。もう少し静かにしてくれるとうれしいのだけれど」
 この文章は、「大きな音だな」という事実、「頭が痛い」という影響や状況、さらに「静かにしてくれるとうれしい」という感情を表現しました。このように「Iメッセージ」のポイントは相手を非難しないで自分の感情、意見を正確に伝え、「私は+状況(事実)+こう感じる」の順序で話すことです。
 また、親子の会話の例を紹介します。子供が母親の手伝いをしてくれた場面です。そのとき、多くの母親は「○○ちゃん、お手伝いしてくれていい子ね」とほめることが多いでしょう。これはYouメッセージですが、このような表現をすると「良い子」という評価のためにお手伝いする子になる可能性があります。一方的に評価されただけなので、自分を尊く思う自尊心が育たず、人の目や評価に左右される人になるかもしれません。
 それをIメッセージで表現すると次のようになります。
「お母さんはやることがいっぱいあって大変だったけど、○○ちゃんが手伝ってくれたおかげで助かったわ。とてもうれしかった。ありがとう」
 子供にとって母親から「助かったわ」「うれしかった」「ありがとう」と感謝されることは「いい子ね」と評価される以上にうれしいものです。自分には人を喜ばせ、幸せにできる力、能力があると感じたり、自分の存在に誇りを感じる「自尊心」も育まれていきます。他のために貢献することが喜びとして感じる「自己実現型の人」になることでしょう。
 人は誰もが自分の存在や行動が他人にどのように影響を与えているか気になっています。本心では他人が喜んでくれること、感謝してくれることを望んでいます。だからこそ、Iメッセージを通して、それが確認できたときは自分の存在価値を再認識することができ、非常にうれしく、心に届きやすくなります。相手が誰であっても、心に届く表現をしていければ「信頼関係」は築いていけるのです。

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