コラム

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愛することで「個性真理体」を確立する②

家庭力アップ講座
多田聰夫

親が自分の理想に沿って子供に注意したり助けたりしすぎると、親の望む子供というものを教えるだけになってしまい、「親にとってのいい子」になってしまいます。

では、どうしたら愛が子供に届くのでしょうか。

第一に、親があるがままの子供自身を受け止めて、子供に対して共感的な聞き方をしていくことです。そうすれば、子供はわかってもらっていると感じ、信頼感と安心感を得て素直な心で前向きになっていけるのです。親が自分の理想に沿って子供に注意したり助けたりしすぎると、親の望む子供というものを教えるだけになってしまい、「親にとってのいい子」になってしまうのです。

第二に、「自分の願いに答え、欲求を満たしてくれる人がいる」という安心感こそが、子供の人生を支える愛の始まりになります。そのためには、親がよく抱いて肌を触れ合うこと、笑顔でやさしく目を見て話しかけること、よく一緒に遊んであげること、無条件にかわいがることなどが必要です。

第三に、子供をよくほめて、常に肯定的な言葉を使って接することです。肯定的な言葉や思いをたくさん書き込まれた子供は、自分に対して肯定的なイメージをもつことが出来ます。そして、自分を好きになることができるのです。

第四に、甘えを受け入れることです。子供は大きくなるに従って、どんどん具体的な問題を抱えるようになります。友達からいじめられたとか、先生から叱られたとか、集団生活の難しさを感じたりします。すると家に帰って「あのね・・・」と、親に問題を話そうとします。それは、子供の「甘え」です。安心感を得ているから話そうとするし、心の痛みを癒そうとして話そうとするわけです。またそれが、子供の自立の準備となります。「甘え」を受け入れるということも、子供に親の愛を届ける一つの方法です。

例をひとつ紹介します。

「今年のお盆に親戚と家族が集まりました。しかし、高校2年生の甥はなぜか一人だけ別の部屋で携帯電話を離さず、私達家族と話をせずに一人ぽつんと、座っていました。彼は頭の毛を赤っぽい色に染め、口と耳にピアスをはめていました。高校生でありながらタバコも吸い、親の言うことも聞かず、小さい頃の無邪気で純粋な面影はありませんでした。

私は彼が一人でいる部屋に行き、彼のそばに座って雑談を始めました。彼は英語がとても好きで、もっと上達したいと言ってきました。そこで私が、自分が英語を好きになったきっかけや上達の秘訣などを話してあげると、彼はとても興味を示してきました。そしてお互いに英語で話し合うようになり、彼の英語の発音を認めてあげました。そしてさらに交流が深まっていくと、彼の今の生活、これからの生き方などにも話が及びました。そして私はタバコはやめた方がいいこと、結婚するまでは男女関係はもたない方がいいことなどまでを話しました。すると、驚くことに彼は素直に話を聞き、今の生活を正しい方向に変えていくように努力することを約束したのです。

そして家族のいる部屋に一緒に行き、談話に加わりました。そこで彼が実は私を尊敬しており、私のように英語を話せるようになりたいと思っていたことを皆の前で話したときは本当に驚きました。そして早速その日、彼はピアスを全部外して捨て、髪の毛を元通り黒く染めたのです。あまりの彼の変化に家族は驚くとともに、私が彼に対して及ぼした影響に驚きました。息子の教育に手を焼いていた妹も、聞くことの重要性を理解してくれました。

私たちが名古屋に帰った後、彼は長い髪の毛を短く切り、その写真を送ってきました。彼とはその後も英語でメールのやりとりをしています。
私は、自分の観点で彼を裁くような目で見ていましたが、実は彼がこんなに純粋であること、そして変わりたいと願っていることに気づいておらず、決して表面的に判断してはいけないことを知らされました。そして少しの時間でも話を聞いてあげるだけでもこんなに変わるのかと自分ながら驚きました。」

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