コラム

colum

「よかったら褒める、悪かったら叱る」について

家庭力アップ講座
多田聰夫

「共感的聴き方」を何度も何度も繰り返して実践することで、自然と「積極的聴き方」ができるようになります。知識だけ理解して、いざ家庭の中で実践しようとしても、すぐにはうまく行かないかもしれませんが、相手の気持ちを分かってあげようという「人の為に生きる」実践を続けていけば、必ずうまく共感していけるようになります。

今までご紹介してきた「共感的聴き方」は、子供に親の愛情が伝わる確かな方法ですが、次は「積極的聴き方」についてご説明したいと思います。「積極的聴き方」も同じように子供に親の愛情が伝わる聴き方です。
「共感的聴き方」を何度も何度も繰り返して実践することで、自然と「積極的聴き方」ができるようになります。知識だけ理解して、いざ家庭の中で実践しようとしても、すぐにはうまく行かないかもしれませんが、相手の気持ちを分かってあげようという「人の為に生きる」実践を続けていけば、必ずうまく共感していけるようになります。

①「よかったら褒める、悪かったら叱る」ことについて

今まで当たり前のように考えられてきたことですが、「よかったら褒める、悪かったら叱る」という考え方をもう一度考え直してみましょう。「よかったら褒める」というのは、確かにそんなに親子関係において問題となることはないでしょう。親が、子供に対して心から褒めてあげたいと感じて褒めることは必要です。しかし、褒めることを、子供の行動を変えるために利用すると、子供の方でも、自分の行動を変えたいから褒めているのだなと、親の動機を見抜いてしまうのです。子供の本性は親を喜ばせたいというところにあるのですが、それも親の動機次第だということです。

一方、「悪かったら叱る」というのは、親の価値観で作り上げた枠組みを親からの目線で子供に当てはめていることが多くあります。もちろん、子供を叱ることが全て悪いわけではありません。必要な時もあることは確かです。ただ、叱る前にぜひ考えてほしいことは、子供にはそのようにした理由があるということです。理由を聞かずに、一方的に親の持っている枠組みを子供に当てはめて叱ると、子供は本当の理由を話せないまま、「親は自分の気持ちを分かってくれない。話したって無駄だ」と、親に対して一種のあきらめのような感情を持つようになってしまいます。そうすると、ますます本当の気持ちを話せなくなってしまいます。

このように、叱ることによって、子供との心の溝が深くなってしまわないように気をつけなくてはなりません。

・以下、実際に会ったエピソードを紹介しましょう。
1) 父と息子の会話
息子:父さんは時給いくらの仕事しているの?
父 :どうして、そんなことを聞くんだ?(息子を不信して)
一応、時給3000円だが…。
息子:ふぅ~ん。意外と高いね。

・・・数日経って
息子:父さん。お金貸してくれない?
父 :何に使うんだ? お金なんて貸せないよ。(息子の対して不信の思いで)

すると、息子は寂しそうに自分の部屋に入りました。父は、「息子に悪いことを言ってしまったな」と感じて、息子の部屋を訪ねました。
父が息子の部屋のドア開けると、息子はお金を数えていました。

父 :なんだ、お金持っているじゃないか。どうしたんだ。(父の息子に対する不信感が強くなる)
息子:実は、お父さんが仕事で忙しくしているので、父さんと話したいんだけどなかなか
話せなくて…。
だから、父さんの時給を聞いて、そのお金を準備して、父さんの仕事の時間を1時間
買おうと思ったんだ。

2) 学校の先生と私
私が中学校二年生のとき、担任の先生から放課後に友人と3人で残るように言われました。
先生は、私たち3人に「お前ら、何をしたか分かっているだろう」と言って、突然頬ビンタをしてきました。そして、「心に手を当てて反省しろ」と言って、その場を去って行きました。
私は今もなお、なぜ頬ビンタを受けたのか分からないでいます。今もその先生に会ったら理由を聞いてみたいと思っています。

親としては、子供が成長していくにつれてだんだんと子供の気持ちが分からなくなってしまい、子供の人生に関わりを持てなくなってしまうのではないでしょうか。私たちはいつまでも「子供の人生の応援団長」でありたいわけですが、応援団長といっても、相手の状況や気持ちがわからない限り、何を応援していいのかもわからないのではないでしょうか。

関連記事

まだデータがありません。