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5感を使ったコミュニケーション表現

幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座
阿部美樹

 私たちの言いたいことが伝わる背景には、様々なことが影響してしていると考えられます。話す場所、身振りや手振り、さらには言葉の意味やタイミングなど。より分かりやすく、より印象的に伝わる工夫をすることで、円滑なコミュニケーションが成立するようになるのです。

 これまでいくつかコミュニケーションのポイントをお伝えしてきました。今回は、相手に何かを伝えるときの表現の方法についてお話したいと思います。
 「語る」といったとき、「口で言葉を語る」のが当然、基本となります。しかし、実際は「身体全体で語っている」と言ったほうが正解と言えます。人の話を録音して聞くのと、直接聞くのとでは迫力がまったく違います。言葉を換えれば「表現とは五感を使って、身体全体でなす」ものです。
 
 では、五感の中で相手に与える影響力が一番大きなものは何でしょうか? 労働科学研究所の発表によると、一番は「視覚」が全体の89%だということです。そして、「聴覚」7%、「嗅覚」3.5%、「触覚」1.5%、「味覚」1%となっています。当然、個人差や話の内容によっても違いますが、このデータを見れば、人間の印象は「目」から来る刺激が圧倒的に多いと分かります。
 ここで、表現する時、相手に影響を与える五つの要素を紹介します。
 
 第1は、「場所、環境の影響」です。人は環境に支配されやすいものです。話しやすい場、聞きやすい場をつくることは話し方の基本です。騒音がひどい所、騒がしい所では、落ち着いて話せません。夫婦で話をするときも、目の前に洗濯物が山のように積んである所より、景色の良いビルの最上階のレストランで話をしたら気持ちよく話すことができるでしょう。どんな話を誰にするかによって、場所を考えることは表現力の一つではないでしょうか。意識して環境の準備をしてみましょう。
 
 第2は、「身振りの影響」です。言葉だけで意図することを表せない時は、ジェスチャーによってその微妙な内容を表すことも必要です。相手の視覚を動員することは話を立体的にし、理解を助けます。話の重要な内容は、手を振りかざしたり、腕を広げたりと、ジェスチャーがつくと印象的に記憶されるものです。ただ、ジェスチャーはあくまで言葉を補うものであり、やたらと手を動かせばよいというものではありません。無意味な動きは単なる癖で、うるさく感じさせる場合もありますので注意してください。
 
 第3は「事物の影響」です。先ほども述べたように、人は目から刺激を受けやすいものです。聞き手は、話し手が話す前から、その服装、髪の色などを評価します。「服装は心の人相」と言われるように、形は内面を表します。外面を清潔に、きれいにすればするほど、自分の心にも相手の心にも好感を与えます。また、内面の美しさも大切です。外面は鏡を見て整え、内面は心の鏡で見て反省する姿勢があれば、謙虚さと穏やかな心で人に接することができるでしょう。
 
 第4には、「行為の影響」があります。黙っていても、その人がいるだけで皆が楽しくなるという人がいます。その人全体から醸し出される人柄によるものですが、話し手の「表情」や「態度」が与える影響は大きいものです。いくら楽しい話でも無表情では楽しさが伝わりません。また、反発感情を引き起こすような「威張った・傲慢な態度」、自信のなさを感じる「落ち着かない態度」、親近感をはばんでしまう「気取った態度」、融通がきかない「場に合わない態度」、ふてくされた感じの「投げやりな態度」などは人に悪印象を与えるので、気をつけなければなりません。
 
 第5に、「言葉と声の影響」です。言葉の「意味」「強弱」「高低」「緩急」「タイミング」などです。
 話をするときには、様々なことが影響して相手に伝わります。ここまで説明してきたように、話す場所、身振り手振り、服装、表情・態度、さらには言葉の意味やタイミング、声の抑揚などを意識して、より分かりやすく、印象的に理解できるようにすることがよりよいコミュニケーションの秘訣です。

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