コラム

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私を成長させる素直な心

幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座
阿部美樹

人間関係がうまくいく人の特徴を見ると、相手を何のこだわりもなく、「素直に受け入れる心」を持っています。好き嫌いなく受け入れるので、衝突もなく、葛藤もありません。反対に、相手を素直に受け入れられず、相手に対して要求の思いが強かったら、人間関係はうまくいきません。相手を自分のいいように変えようとする人は、相手を利用しようとする人です。「素直さ」は、コミュニケーションを豊かにするポイントです。

 素直に受け入れ、素直に吸収できる人は限りなく成長し、発展する人といえます。人間の能力の限界は、能力があるかどうかというよりも、その人の意識の壁、心理的な壁が大きな問題です。「できない」と思いやすい人は、その人に能力があるかないかにかかわらず、できないという結果になります。逆に心の壁をつくらない素直な人はどんどん伸びます。
 スポーツの世界ですが、こんな話があります。野球で「世界の王」と言われた王貞治さんは、巨人の選手時代に荒川博コーチの指導を受けて、猛特訓の末に一本足打法が編み出されたことは有名です。当時のことを、荒川博さんは次のように語っています。
「習い方がうまいという人とは、習う素直さがある人です。これが第一条件です。王は私に口答えしたことは一回もありませんでした」
 また、マラソンのシドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんも、監督だった小出義雄さんに言わせると、一番印象的なことは「素直な性格」ということでした。大学時代まで無名であったにもかかわらず、飛躍的な成長をなし、大きな勝利を収めることができました。
 成長するということは、自分が変化することです。その人のとる行動や習慣、考え方が変わるということですが、それを変えるのはあくまでも本人です。何かをきっかけに、自分を変える努力をした時、初めて人は成長します。アドバイスを受けても、育つ人と育たない人がいるのが現実です。そんな中、自分を変えたいという思いから「素直」に受け入れられる人は、どんどん成長します。
 しかし、素直に受け入れるだけでは、成長にとって十分とはいえません。受け入れる「インプット」だけでは、人は成長しないということです。受け入れたものを自分の中で消化し、外に表すことも重要です。例えば、学んだ内容を人に伝えようとしたら真剣に学び、一層深く理解しようとするものです。
 アウトプットすることは、それまでインプットしたものを、消化・吸収し、自分のものにする最も効率的な方法です。人間はアウトプットを増やすことによって、自然に正しいインプットが増えるようになります。ヨーガの呼吸法では、深い呼吸をしたければ息を吐くことにだけ意識を集中しろと言います。体内のすべての息を吐き切れば、何も考えなくても自然に十分な空気を吸うことができるからです。素直にインプットし、素直にアウトプットすることがより、効果的に成長するポイントです。
 人間関係も同じです。人は十人十色というように、それぞれ違いますが、違うことに注目しすぎて葛藤することがあります。家族であっても個性は違いますから、自分の物差しで人をはかってはいけません。どのような人であっても素直に受け入れてみる姿勢が大切です。相手を分析する鋭さよりも、相手を受け入れる寛容さを磨くことが、豊かな家族関係を結ぶポイントです。