コラム

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相手の心を開くユーモア

幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座
阿部美樹

 人間関係の円滑さを高めるための一つに「ユーモア」があります。ユーモアが嫌だ、嫌いだという人はほとんどいないでしょう。ユーモアを込めて何か楽しいことをしなさいと言われたら苦手だという人はいるでしょうが、ユーモアを味わうことは、誰もが心地よく感じるものです。

 会議や講演などで話を聞くにおいても、ユーモアを交えた話は興味深く、印象深く心に残ります。笑った瞬間、人は心が解放されます。笑いながら心を閉ざすことはできません。家族でも、職場でも、学校でも、ユーモアのある人間関係は、心地よく、肯定的な関係性をつくり出します。
 
 『日本でいちばん大切にしたい会社2』(坂本光司著,あさ出版,2010年)でも紹介されている、株式会社沖縄教育出版という会社があります。そこは、「日本一長い朝礼の会社」と言われています。毎日の朝礼が40分から1時間半、長い時には3時間に及ぶこともあるといいます。ものまねや寸劇も飛び出すなど笑いが絶えず、それによって社内のコミュニケーションや活力が生まれ、お客様との信頼も強化されていくといいます。
 その朝礼の内容はというと、まず、聴覚障がい者もいるため手話のあいさつで始まります。それから、オリジナルのハッピー体操などでワイワイとはしゃぎながらウォーミングアップをして、各部署からの連絡や役立つこと、契約件数の発表、経営理念に関する社長の話などが続きます。
 ほかにも、社員がお得意さまからいただいたお電話、お手紙の中から感動的な内容を発表したり、家族や友達のエピソードを披露したりと、実にバラエティーに富んでいます。この朝礼はとても自由度が高く、特別な形式のようなものはありません。離婚したパートさんが身の上話を披露され、それを皆で涙しながら聞くこともあるそうです。そういう何を言っても受け入れてもらえる雰囲気があるので、社会のコミュニケーションが生まれ、絆も深まるようです。
 この朝礼の自由なユーモアあふれる雰囲気は、社内の人間関係や従業員のやる気・モチベーションを高めるとともに、お客様との信頼関係にそのまま影響していきます。この会社の商品を購入されたお客様のリピート率が95%という高い数字を維持しているのも、朝礼によるところが大きいといいます。社員も常日頃から「最大の企業ではなく、最良の企業を目指そう」と呼びかけているようです。社長のユーモアあふれる人間性が現れた企業文化を感じます。
 
 ユーモアあふれる経営者といえば、松下電器の創業者・松下幸之助氏もその一人ではないかと思います。
 松下氏の生前、次のようなできごとがあったそうです。若い社員を連れて京都の料亭に行った時のことです。松下氏は座敷に入るなり同行者にこう言いました。「この料亭とこのあたりの土地は、実はわしのもなんや」。驚いている社員に、松下氏は「いや、そう考えたらおもしろいやろ。本当は全部自分ものやけど、本業が忙しくて、常に料理屋の主人でいるわけにはいかん。だからこの方々にお願いして、店と土地を任せてある。今日支払うお代も、それへのお礼の気持ちや。そう考えたら、お店の人への感謝の気持ちもより湧いてくるやろう」。松下氏はそのように、いつも自分の心を弾ませるような発想をする人でした。
 さらに次のようなことも語られました。「自分にはユーモアなんかありません。陰気な男ですわ」。こうした独特なユーモアにあふれる発言は、いったいどこから生まれてくるものなのでしょうか。その一つに「素直な心」があります。自分を飾らず、何にもとらわれない心があるから、他の人が見落としている物事の本質を突き、それが時にユーモアを含んだ言葉となっていきます。さらに、相手に喜んでもらいたいという強い「サービス精神」があるのでしょう。
 
 ユーモアといっても、さまざまな概念があると思いますが、その精神はやはり、飾らない姿勢や人に対する思いやり、愛情といった「人間性」から生まれるのではないでしょうか。ユーモアは英語で「humor(ヒューモア)」です。その語源は「ヒューマン(人間)」だといいます。ただおかしいことを言って愉快にしていればユーモアがあると思いがちですが、そうではありません。本当に自分自身が人間らしくなれば、それ自体がユーモアなのではないでしょうか。
 
 私は学生時代に、人から笑われないようにと意識しすぎて疲れてしまった経験があります。そのような時、テレビで「ピエロの姿」を見て、はっとさせられたことがありました。このピエロは自分をさらけ出して、人から笑われながらも皆の人気者です。笑われないように自分を覆い隠すのではなく、笑われながらでも自分の自然体をさらけ出していくほうが、本当の信頼関係が築かれていくのかもしれません。自然体で飾らずにユーモアのある個性を磨いていきたいものです。

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