コラム
colum心のバランスが平常心をつくる
人生、成功もあれば失敗もあります。大切なことは、成功したからといって、ただ満足してはいけませんし、失敗したといってあきらめないことです。
成功した時は、成功できなかったことが土台になっていることを思い出さなければなりませんし、失敗した時、苦労している時は、必ずこの土台で成功する、幸せになることを信じ、思い描くことが大切になります。「心のバランス」が大切だということです。
「心のバランス」は「平常心」を持つこととも言えます。不動の心といっても、心を一点にとどめることは難しいものです。極と極のバランスが取れて初めて、平常心を持つことができます。バランス感覚は、肉体的にも精神的にも重要ですが、「平常心」は心のバランスということができます。
元メジャーリーガーの松井秀喜選手は、著書の中で次のようなことを強調しています。
「結果を左右するのは、願いの強さではなく『平常心』ではないかと思います。400打席、同じような心境で打席に入れるかどうか。一打打てれば勝てるという場面は、相手投手にとっては、一打浴びれば負ける場面です。ピッチャーとバッターのどちらがより『平常心』で臨んでいるかが、勝負も分かれめになるような気がします。チャンスに強いバッターというのは、要するに、ここぞという場面でも『平常心』を保てる選手ではないでしょうか」(『不動心』,新潮社,2007)
このように、「平常心」が大切なのですが、それを保つポイントが「極と極に通じたバランス」です。例えば、4メートルの長さの1本の棒を肩に担いでいると想像してください。
右側の先に5キロの重りをつるしました。何とか落ちないように持ちこたえられるでしょう。それをさらに10キロにしました。さらに20キロにしました。少しの時間であれば持ちこたえられますが、だんだん難しくなります。さらに40キロまで重りをつるしたいのですが、どうしたらよいでしょうか? 両端に、均等に20キロずつつるしたら長く持つことができます。この教訓は、極と極のつり合いがとれたらバランスよく長持ちするということです。
思いの世界も同じです。一つの平均台があるとします。この平均台の端に立ってからゆっくりと台の上を歩いてみましょう。多くの人は落ちないで反対側まで渡ることができるでしょう。渡れて当然と思っているからです。では、同じ平均台ですが、10階建てのビルとビルの間にかけてあったらどうでしょうか? 一歩間違ったらまっさかさまに落下します。先ほどと同じようにすいすい渡ることができるでしょうか? 渡ろうとする人自体、いなくなるかもしれません。
なぜかと言うと「落ちるかもしれない」という恐怖心にとらわれて、心のバランスを失っているからです。渡る唯一の道は、ビルとビルの間にあったとしても、部屋の中にあると思って渡ることです。このように、心のバランスを持つことが平常心を保つ方法です。
スポーツの世界での失敗の多くは、負けることへの想像が恐怖心を呼んで、筋肉を委縮させることから起きます。では、この恐怖心をなくためにはどうしたらよいでしょうか?
理屈は簡単です。勝つことを考えないようにすれば良いのです。勝つことを意識すれば、ひょっとして負けるのではないかという恐れが強くなり、何かのはずみでマイナスの考えに引きずられてしまいます。
先ほど、極と極という話をしていましたが、極端に極を意識するよりも、無になることです。平常心になってゼロポイントにするのです。勝つか負けるかにとらわれた感情の闘いが消された、気負いのない平常心です。
この平常心に至ることができれば、そこからは夢をイメージして描くことです。平常心の土台ができたら、そこに描いた夢は実現します。未来に光り輝く自分のイメージを描きながら、自らを励ましてみてください。心を激励してください。困難を乗り越えるのだという、愛を込めた言葉を送ってください。そのようなイメージを思えば、それを成し遂げられる確率が高くなるでしょう。
普段の生活でも、その日のスケジュールを頭の中で反復するなど、自分の行動を予行演習してみてください。その時、イメージをどれだけ細かく描けるかで、成否も大きく違ってきます。
自分と、自分の人生に対して肯定的で明るいイメージを描いてみましょう。私たちの人生は、どんな考えをして生きるかで変わってきます。肯定的に考えれば、私たちの人生もそのようになります。
私たち自身の未来を描く時、“勝利する私”“成功する私”“平和をつくる私”としてイメージ化し、それを成すために努力すれば、皆さんは人生においてより多くの勝利、多くの悟り、多くの平和を得ることができるでしょう。