コラム

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相手の心を開く質問

幸福度がアップする家族のコミュニケーション講座
阿部美樹

 コミュニケーション能力が高い人は、質問上手です。質問が上手な人と話をすると、話しやすく、心地よく、もっと話をしたいという思いになります。
 質問が上手な人は聴き上手とも言えるでしょう。聴いてあげることの良さや効果をよく分かっています。人は聴くだけで変わることが多くあります。なぜかというと、「口を開くことをは心を開くこと」と言うように、話せば話すほど心が解放されるのです。

 心を閉ざしている人は、口数も少なくなります。口を開き続ける人は、心も解放されます。話すことを快く、前向きに聞いてくれる人がいると心が浄化されるのです。
 聴いてもらうことで、「気持ちが整理」されます。話しながら「そうか、私はこのようなことを考えていたんだな」と改めて再確認させられます。そして、心がすっきりして、気分が軽くなります。さらに、適度な質問をしながら聴いてあげるならば、話しながら問題の本質を自分が発見したりします。「ここが問題かな……」という発見です。
 さらに「それに対してどうしたら良いと思います?」という質問を受けたら、「どうしたら良いのか」「何からやるべきなのか」「何が効果的なのか」などを考えることを通じ、解決の道が見えたり、解決の力が湧いてきたりします。
 このように、聴くことをより深めるために効果的なことは「質問」です。質問されることを通して、より深く考えるようになり、より広い視野で見つめるようになり、様々な角度で考察するようになります。

 
 親子の会話を考えてみましょう。子供が母親に向かって次のような話をしたとしましょう。
「お母さん、テストの点数が良くなるためにはどうしたらいいのかな?」
 あなたがお母さんだったら何と答えますか? 多くの人が「それは、こうじゃない?」と言いながら、自分の意見を言うことでしょう。子供は何か良いアドバイスを願っているのですが、その時、答えを教えることや提案するのではなく、「あなたはどうしたら良いと思う?」と聴いてみたらどうでしょうか。
 逆質問されることで、子供は改めて解決の道、効果的な方法を自分で模索し始めます。親は自分なりの答えがあったとしても、子供に考えさせることや一緒に考えることで、より良い答えを探すことができるでしょう。自分で発見したり、考えたりしたことは、人から教えられたものよりも強い自覚とやる気につながります。

 
 また、子供がピアノ教室に通っていたとしましょう。ある日、突然「あの……ピアノ教室、やめたいんだけど……」と言いました。あなたが親だったら何と答えますか? 多くの親は「どうして? 何があったの?」と原因を聞きだそうとしたり、「何を言っているの、あなたからやりたいと言ったのよ!」と言い返したりしたくならないでしょうか。
 しかし、この時、「やめたいの?」と冷静に子供の気持ちに共感し、受け止め、さらに「本当にやめるの?」と軽く聞き返すようにしたらどうでしょう。子供は気持ちをただ冷静に受け止めてもらうと、改めて「自分は本当にやめたいんだろうか?」と自問自答しながら、冷静に考え直していくものです。
 子供はいくら幼くても、自分なりに考えを持っていたり、考えられる能力を持っています。自分の人生に対して、自分で判断し、責任を持つ習慣を身につけるならば、大きく成長していくでしょう。
 この時、大切なのは、一緒に考えてあげる姿勢です。「自分で考えなさい」と突き放すのでもなく、「こうしなさい」と決めつけるのでもなく、一緒に考えてあげることで生きる意欲と知恵が身についていくことでしょう。

 
 親子関係も考えてみると、親は子供の話を聴いているようで、案外聴いていない場合が多いものです。それは子供よりも親のほうが何でもよく知っていると思っているから、知らない子供に教えなければならないという気持ちになるのです。しかし、子供は、幼くとも自分なりの答えを持っています。
 親にとって大切なことは、その答えが本当に子供にとって最適なものなのかどうかを一緒に考えることです。子供の答えをサポートすることです。親の考えを押し付けるのではなく、子供が自分の生き方を見つけられるようにサポートするのです。
 親子関係だけでなく、すべての人間関係で、同じように聴く姿勢が大切です。このようなサポートをする時に、有効なのが「質問」です。質問を通して、相手の心を引き出し、整理し、相手の能力を引き出してあげることができるでしょう。

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